まえがき
                           伊藤 穂澄


 私が,<トルクと重心>の授業をしたのは4回です。ただ,昨年度は3クラスやったから,それを数えるなら6回ということになりますが,全部通してやったのは昨年度が初めてです。
 もともと科学には弱くて,特に力学なんて仮説と出会わなかったら一生縁がないだろうと思っていた私ですから,竹田さんが「授業ノート」を書くように進めてくれたとき,最初は「そんなの書くことないよ」と思いました。だって竹田さんの授業ノートを片手に授業をしていたのですから・・。
 しかし,授業を進めていくうちに,今回は3部や4部で自分が「なるほどー」と感動したことがでてきました。そして,授業ノートには書いてないけど「こうしてみたらどうだろう」と思って工夫したところも少しはありました。そして何より竹田さんの授業ノートには「実験の結果」が書いてないのに気がついたのです。トルクの原理をすんなり受け入れて,科学大好きの人には計算どおりいくに決まっているから「実験の結果」なんて書く必要もないほど当たり前のことなのかもしれませんが,私にとっては自分の計算だけでは不安でした。それどころか実験しても「本当にこれでいいんだよなあ」って言い聞かせて,おそるおそるやっていました。
それは特に3部4部に多かったのですが,逆に3部4部をやったことで,今回は「本当に,本当に計算どおりなんだー」と,<トルクの原理>によけい感動しました。きっと私のようにこの<トルクと重心>の授業をすることによって味わう人もいるのではないかと思って書いてみることにしました。
 こんな私のように力学の苦手な人のための<トルクと重心>のノートです。この授業ノートを見て授業をやってくれる人がいたらうれしいです。そして,またもっと「こうしたらいいよ」とか「ここがわかりにくい」とか教えていただけるといいなと思いつつ書いてみました。
それから,私が<トルクと重心>を最初にやったときは2部の〔問題1〕は,ヒントを見て半ば押し付けるような形でトルクの式を使って授業をしていきました。その時は気がつかなかったけど,その後で話を聞くにつけ,子どもにとって「力」と「トルク」が混乱して〔問題1〕は難しいものであることがわかりました。最初に授業をしたときの私は,大人にとっては理解しやすいものであっても,子どもにとってはそうでないということに気がついていなかったのです。つまり子ども理解が足らなかったのだと今は思います。
 それが竹田さんの授業ノートを見て,子どもたちに「わかるように授業をする」ことの大事さがわかりました。もちろん楽しさよりわかることを優先してはいけないと思います。でも,できることなら「わかる楽しさ」も味わってほしい,そういうこだわりで竹田さんが授業ノートに書かれたことをたくさんこのノートにも引用させていただきました。
 ただ,それでも子どもにとって難しい部分がある授業書だと思います。そんなときは,「いやな思いをさせてまでわかってもらう」よりも「わからなくてもいい雰囲気で」授業できるようにしたらいいと今は思えるようになりました。
 そういうことも含めて,ほとんど竹田さんの授業ノートの引用でできたノートです。また,その授業ノートに書かれていたたくさんの方々の工夫も取り入れさせていただきました。どうもありがとうございました。
                                         2002年3月3日