具体的な漢字マッキーノのやり方

私のやっている方法の紹介

 
 「マッキーノ」というのは、名古屋の牧野英一さんが考案した「たのしいドリル」の一つです。ビンゴゲームによく似ていますが、「0列賞のあること」が決定的に違います。そして、それを学習の手立てとして使うようにしたことがそれまでのビンゴゲームとは全く違うと思います。

 マッキーノは、仮説実験授業研究会では習熟の手立てとして。かなり普及していると思うのですが、そのやり方は、人によって微妙に違うところもあるようです。ここでは、私のやり方を紹介しますが、多少は違うやり方をしている人もあることはご承知おきください。

 最初私はこのようなやり方で漢字が覚えられるとは思いませんでした。しかし、ほかの色々な手立てに比べ、勝るとも劣らない成果を上げることは既にたくさんの人が実証しています。そして、ほかの手立てと何よりも違うのは、子供たちの絶大なる支持です。私は現在のところ習熟の手立てとしてこれに勝るものはないと思っています。



○マッキーノ用紙
 私は、A5の紙に、縦横に4ますを大きく印刷したものを縦長で使っています。
 低学年の場合は、縦横3ますでいいと思います。

 また、社会や理科の授業でそこに出てくる用語のマッキーノをやる時は横長にしています。
 
 私は毎日やるので、この用紙は裏表印刷して、たくさん印刷しておきます。

○ マッキーノリスト
 私は漢字の場合は、漢字ドリルを使っています。低学年の場合は、マッキーノ用紙に漢字も印刷したものを使ったときもあるし、今でも社会や理科でやる時には、用紙に用語を印刷しますが、漢字の場合は漢字ドリルです。

 漢字ドリルを使う場合は、ドリルから漢字(熟語)を22個選んでおき、子供たちに、「この22個の中から選んで書いてね」と言っておきます。ドリルのページに20しか熟語がないときは、ほかの熟語を2つ選んでおくか、または、20でもかまわないと思います。(でも、できたら、22の方がいいです。適度に0列賞が出ます)

 9ますの場合は、14ないしは15選んでおきます。
 私の場合は、ドリルが来ると、1学期の分が1学期で終わるように、1つのリストにどのくらい時間をかけることができるか計算してやります。でも、1つのリストは最低でも1週間ぐらい(つまり5回)はやった方がいいと思います。当たり前ですが、たくさんやれば、定着度はよくなります。


○提示用カードの用意
  フラッシュカードのようなもの。リストの漢字を大きく書いておきます。
  私はあわてて、子供たちが漢字を書いているときに一緒に書くことも多いです。


○ 新出漢字について
 マッキーノをやる前に、一応新出漢字は教えます。でも、間違えやすいところを注意してそれぞれ1回ずつ書いてもらったり、読んでもらったりするくらいでおしまい。マッキーノをやりながら覚えるので、一応教えるという程度です。

 社会や理科の語句についても同様で、読み方を教えたり、簡単に意味を言うことはあったりするけど、「どういうことかは後でわかるからね」と、意味のわからないまま書いてもらうことの方が多いです。私は最初「意味のわからないまま書いても意味がないのではないか」と思っていました。しかし、やってみて「そうではない」ということがわかりました。意味がわからなくても何度も書いたり聞いたりしている言葉というのは、親しみがあるせいでしょうか、意味を説明された時にすぐ定着できるようなのです。

○ やり方
一番最初にやる時には、先生も黒板に書いて、子供たちと同じようにやるとわかりやすいと思います。

 子どもたちは、マッキーノリストから、漢字を選んで好きな場所に書く。

 当然のことながら、書かない漢字も出てきます。が、しかし、それにもかかわらず、ほとんどの漢字を覚えてしまいます。
 最初は全員が書き終わるまでにかなり時間がかかると思いますが、慣れてくるとかなり早くなります。が、それでも、時間のかかってしまう子がいる時には、その子だけ先に書いてもらっておくとか、また、おうちで書いてもらうとかの手もあります。
 
 また、この楽しさがわからない段階では、書くのを拒否する子もいるかもしれません。そんなときには、せめてゲームだけでも参加できるようにしてみてください。


 漢字を書く際には、どの漢字を書いたのか印をつけておかないと、間違えて同じ感じを2回書いてしまうことがあります。そのため、あらかじめ「印をつけておいたほうがいいよ」など助言しておくといいです。


② 全員が書けたら、先生がフラッシュカードをよく切って1枚ずつ引いていく。

 私はカードを引いたら、そのカードをみんなに見せながら大きな声でそれを読み、開いたカードは黒板に貼り付けておきます。
 カードは全部開くのではなく、マスの数だけ開いて終わりです。(16マスの時には16枚、9マスの場合は9枚)    そのため、いくつ開いたのか、あと何枚開くのかを分かりやすくするために、黒板に貼るのです。

       

③ 出た漢字に印をつけ、もしそろったら賞をもらう。

  子どもたちは、自分の書いた漢字が出たら、それに印をつけていきます。誰よりも早く1列そろったら、「早上がり賞」です。賞はこれ以外に、「0列賞」と「最多列賞」があります。
    
 私はまず誰よりも早く1列そろったら、そろったら、私のところまで見せに来てもらって、確認後、黒板に名前を書き、自分で好きなスタンプを用紙に押すことにしています。

  1列そろった子が出ても終わりではなくさらにフラッシュカードを引き続け、マッキーノ用紙のマスの数だけカードを引きます。 2人目にビンゴになっても賞はもらえませんが、16枚引いたところで、「1列もそろっていない」場合は「0列賞」ということで、しょうがもらえます。やはり私のところまで見せに来てもらって黒板に名前を書きスタンプを押します。
    
 また、最後まで開いた時に一番たくさん列がそろっている子は「最多列賞」ということで賞がもらえます。(見せに来る、黒板に記名、スタンプは同じ)私は「〇列の人~~~」と順に聞いていきます。

  つまり、普通のビンゴと違うのは、「早上がり」「0列」「最多列」と3つの賞があることです。「0列賞」があることで、ちっともそろわない子も最後まで楽しめ、最多列賞は、そのときによって4列で賞がとれることもあれば、7列でも取れないなどということがあって、ずっとやっていても飽きずに楽しめるのです。

④ 全部の賞が出たらおしまい

 おしまいですが、私は一応マッキーノ用紙を回収して、漢字が正しく書けているかどうかチェックしています。間違っている場合は、赤で訂正し、次にやる時には「チェックされているかどうかをよく見て、次には正しく書くように」と言います。同じような間違いをたくさんの子がしている時には、全体的に話をするときもあります。

⑤ これを毎日やり、金曜日にはテストをします。

  漢字が得意でない子は、マッキーノをしたからといってすぐにはできるようになることはないかもしれません。でも、確実に読めるようにはなりますし、漢字に対する意欲は増すと思います。
  私は、テストの前には「明日テストをする」ということは言っています。
  私がはじめてやった時は実験的でしたので抜き打ちでやりました。最初子供たちは「えええ~~!!全然覚えてないよ~~」といっていたのですが、実際のテストになったら「なんか知らんけど覚えとった」と言っていました。それに驚いた私でした。

  このやり方で、ちゃんと漢字が覚えられるということを確認する意味でも、テストはやったほうがいいと思います。
  また、テストで高得点が取れることによって子供たちが自信を持つということもあるので、テストは必須です。


○ 漢字以外のいろいろなバリエーション

 私のやったいろいろなバリエーションを書いておきます。
ひらがなマッキーノ  1年生の1学期はこれをやりました。少しずつ文字を教えながら、教えた文字でできる単語でやりました。
 このとき気づいたこと、とくに拗音などの場合、「きゃ」「きゅ」「きょ」とやるよりも、 「きゅうり」「きょうしつ」などと意味のある言葉でやった方がいいようでした。
数字マッキーノ 1年生の一番最初は、数字マッキーノをやりました。タイルを見せて数を書いてもらったと思います。0を入れて10個しか数字のない中で9個数字を書くので、開くカードの数を減らしてやったと思います。
10の補数マッキーノ やはり1年生で。数字を見て、10の補数をマスに書くというようにやりました。やはり開くカードを減らしたと思います。
かけざんマッキーノ 2年生の九九を覚える時にやりました。フラッシュカードに問題だけを書いて、リストには答えだけを書くというようにやりました。
最初のうちは段を決めてやりました。そうすると、9までしかないので、すべて書いてしまうので、ビンゴ(1列上がったらおしまい)を何回か繰り返すと言うことをやりましたが、習熟してきたら、2つの段を決めてそこから選んでマッキーノをやるというようにもやりました。ビンゴよりマッキーノの方が楽しいです。
   
このような場合、答えが同じものになることもあるのですが、かまわずやりました。○をつけるときには、どれに○をつけてもいいことにしました。
算数マッキーノ かけざんがうまくいったように感じたので、1年生での足し算引き算や、5年生での小数の計算(暗算でやれるようなもの)でも、やってみました。しかし、このあたりは、まだ、研究途中です。
ローマ字マッキーノ あんまり本格的にはやってないけど、ちょっとやりました。この場合は、単語ではなく、文字でやったほうがいいようです。
社会・理科などの用語マッキーノ そもそもマッキーノは、理科の教科書用語の習熟法として生まれたものです。覚える必要があると感じられるものについては行いました。理科の場合は中学校で原子記号を覚えるのに使ったこともあります。
カード式マッキーノ  障害児学級で、「選んで好きな場所に書く」ということができない子を担任した時には、マッキーノリストの代わりにカードを用意してそれをよく切って順に書いていってもらうという方法で行いました。〈文字を書くことが難しい子〉の場合は、「カードを並べる」というやり方もあると思います。

○ おまけ
 現在私はA5の紙を綴じる用のファイルを買って、マッキーノ用紙はそこに綴じておくようにしています。これをやっていると漢字ノートは全然使わないので、ちゃんと漢字の勉強をしていることを示すためです。
 今はご褒美にスタンプを押すことになっていますが、前には何もなくても喜んでくれました。スタンプでなくてシールでもいいけど、シールは減るけどスタンプは減らないので便利です。私はとくに年間を通した賞なんかは作ってはいないけど、作っている人もいます。